「また福岡に行く」と話した時の友人たちの反応は、決まって同じでした。「あそこって、ショッピングとグルメ以外に何かあるの?」と。確かに、私もそう思っていたかもしれません。天神地下街から始まり、大名エリアまで見て回るショッピングコース、行列のできるラーメン、そして夜のもつ鍋。空港から市内まで15分というアクセスの良さも魅力です。何度か訪れるうちに自分だけのルートができるほど、慣れ親しんだ心地よい場所、それが福岡でした。
しかし、3回目ともなると、その慣れは少し退屈に感じられるようになりました。パルコのどのフロアに何があるか、博多駅の「イル・フォルノ・デル・ミニョン」のクロワッサンの行列が何時に一番短くなるかまで把握した頃、ふと疑問が湧いてきました。「観光客の私を除いた、本当の福岡の人たちはどこで買い物をして、週末はどこで休んでいるんだろう?」この小さな好奇心が、今回の旅の計画をすべて覆すことになったのです。
そこで今回は、レンタカーの代わりに路線バスの時刻表を眺めることにしました。目的地は2か所。「福岡の台所」と呼ばれる「柳橋連合市場」と、電車で2時間かけて行く由布院ではなく、市内からバスで30分で着く「秘密の近郊温泉」です。早朝、魚の匂いと活気が満ちる市場で新鮮な海の幸を味わい、午後は静かな露天風呂に浸かる一日。想像するだけで、完璧なローカルの一日ではないでしょうか。
もちろん、ショッピングとグルメの街・福岡も依然として魅力的です。しかし、そのよく知られた魅力の裏側には、少しゆっくりで素朴だけれど、だからこそ温かい、本当の福岡の素顔が息づいていました。今回の旅は、まさにその素顔をじっくりと覗いてきた記録です。
由布院まで行く必要なし?福岡市内からすぐの穴場温泉
正直なところ、福岡で温泉というのは少し意外でした。普通は電車で2時間以上かけて由布院や別府へ向かうのが定番ですから。しかし、時間も予算も限られていた私は、別の選択肢を探さなければなりませんでした。
そうして見つけたのが、那珂川 清滝(なかがわ せいりゅう)という温泉です。博多駅からシャトルバスに乗れば30~40分で到着する、まさに「都会のオアシス」のような場所でした。旅館に宿泊する負担なく、日帰りで気軽に温泉だけを楽しめる点がとても気に入りました。バスを降りた途端に感じる澄んだ空気と、ほのかな硫黄の香りに「ああ、ちゃんと良い場所に来たな」と思いました。湯船に浸かって顔を上げると、青い空と木々の葉の間から差し込む陽の光が見えました。冷たい冬の空気に触れる顔や肩は涼しく、お湯に浸かった体は芯からほぐれていく、あの感覚。これこそが日本の温泉旅行の醍醐味ではないでしょうか。
特に、渓流の音を聞きながら入る露天風呂は最高でした。有名な観光地の温泉のように混雑していないので、完全に自分だけの時間を持ち、静かに休むことができました。温泉上がりに飲む冷たい牛乳の美味しさは、言うまでもありません。福岡市内の活気ある雰囲気とは全く違う、穏やかで平和な時間を過ごしたいなら、ここ以上の場所はないでしょう。
コスパの良い日帰り温泉
宿泊なしで温泉だけを楽しむスタイル。シャトルバスや公共交通機関でアクセス可能で、入浴料とタオルレンタル料程度で済むため経済的です。気軽に疲れを癒したい時にぴったりです。
ラグジュアリーな旅館ステイ
温泉と共に宿泊し、懐石料理までフルコースで楽しむ伝統的なスタイル。費用はかかりますが、完璧な休息と日本の文化を深く体験したい時には最高の選択です。
天神地下街じゃない、本当の「福岡の台所」へ
昨日訪れた近郊の温泉のおかげか、体が飛ぶように軽い朝。ホテルの朝食はパスして向かったのは、「福岡の台所」という素敵な愛称を持つ柳橋連合市場(やなぎばしれんごういちば)です。天神のデパ地下や博多駅のきれいなレストラン街とは、空気感からして違います。100年以上の歳月が積み重なった、100mほどのアーケードの路地。磯の香りと香ばしい漬物の匂いが混ざり合い、店先にはついさっきまで海にいたかのような魚たちが銀色の鱗を輝かせています。「おいしいよー!」と呼びかける商人たちの活気ある声まで、市場全体がまるで一つの巨大な生き物のように躍動していました。
ここの本当の魅力は、観光客向けにきれいに包装された商品ではなく、地元の人々の食卓に並ぶ本物の食材や料理を味わえることです。私も朝食を食べる場所を探してきょろきょろ。市場の入口にある練り物屋さんで、揚げたての温かい天ぷらを一本頬張ることからスタート。お腹が温まると、本格的に食事をする場所が目に入ってきました。小さな食堂のカウンターに席を取り注文した海鮮丼は、派手さはないものの、素材本来の新鮮さが口いっぱいに広がる美味しさでした。
柳橋連合市場を100%楽しむには、いくつかのコツがあります。まずは現金を多めに、特に1,000円札と小銭を用意しておくこと。そして、豪華な食事を期待するより、色々なお店を巡りながら少しずつ味わう「立ち食い」の楽しさを満喫するのがポイントです。何を食べたらいいかわからないなら、まずは以下の2つから試してみてはいかがでしょうか。
くじら肉&明太子
福岡名物の明太子(めんたいこ)のお店はもちろん、他ではあまり見かけないくじら肉の専門店もあります。試食コーナーを活用してみるのも良い方法です。
その場で味わう海産物
一部の鮮魚店では、新鮮なホタテやウニを選ぶと、その場で焼いてくれたり、すぐに食べられるようにさばいてくれたりします。一口で海を丸ごと飲み込むような感覚です!
お店のおばあさんに「どこから来たの?」と話しかけられ、たどたどしい日本語で「韓国(かんこく)です!」と答えると、「あらまあ、遠くからよく来たねえ!」と満面の笑みを返してくれた瞬間。有名店の長い行列に並んで撮る記念写真の代わりに、市場の人々の日常に少しだけ溶け込むような、こんな経験こそが旅の醍醐味ではないでしょうか。100年以上にわたって福岡の人々の朝を支えてきたこの場所のより詳しい情報は、柳橋連合市場の公式サイトで確認できます。
旅のヒント
昨日訪れた近郊の温泉と、今朝の市場。どちらも福岡旅行のハイライトでした。このコースをそのまま巡る方々のために、私が実際に体験して得た、ささいだけれど決定的に重要ないくつかのヒントをお伝えします。壮大な計画よりも、こうしたディテールの一つが旅の質を左右することもありますから。
まず、那珂川 清滝のような近郊へ出かける際は、交通手段が最も重要です。博多駅や天神から出発する無料シャトルバスがありますが、運行間隔が1時間程度とかなり長めです。乗り過ごすとタクシー以外に有効な手段がなくなるので、出発前日には必ず公式サイトで最新の時刻表を確認し、スクリーンショットを撮っておきましょう。バスに乗ったら、運転手さんに温泉へ行くと伝え、往復チケット(入浴券込み)を現金で購入するのが一般的です。千円札と小銭を多めに用意しておくと、お互いにスムーズです。
温泉では、小さなタオル(フェイスタオルサイズ)を一枚持っていくと、「旅慣れた人」のように見えるかもしれません。湯船に入るときは頭の上にのせ、湯船から出て他の場所に移動する際に体の重要な部分をさっと隠すためのものです。もちろん、タオルは温泉でも有料でレンタルできるので、忘れてしまっても心配は要りません。最も大切なのは、湯船に入る前に、洗い場で体をきれいに洗うこと!これは日本の温泉の基本的なマナーなので、忘れないようにしましょう。
柳橋連合市場は、「朝早く」という漠然とした言葉よりも、「午前10時までに到着」を目標にするのがおすすめです。地元の人たちが夕食の買い出しに来る本当のピークタイムは、もっとずっと早い時間帯です。お昼時が近づくと、人気店はすでに品切れになったり店じまいを始めたりして、活気ある雰囲気を味わうのが難しくなります。まさに「福岡の台所」ですから、他の人が夕食の準備をする時間ではなく、朝食を準備する時間に合わせて訪れるのが良いでしょう。靴は、床が濡れていても大丈夫な、歩きやすいものを選んでくださいね。